Livingstone Daisy 「33 Minutes Before The Light」

cymbals60222013-04-01

「さあ行こうぜ」



そんな言葉から始まるこのアルバムは、どこかノスタルジックな空気を常にまとっている。


「ノスタルジックな空気って何、それ」と言われるとちょっと辛い。
拙い言葉で例えるなら、懐かしさとは違う、良い意味での「淋しさ」のようなものだろうか。


ハッキリと言ってしまうけど、日本のヒットチャートには今、こんな音楽はない。
「辛さ」「淋しさ」を唄った楽曲はいくつもあるけれど、ここまで静かな音楽ではない。



僕は今年29になった。まだ若いといえば確かにそうだけれど、若いなりに色々音楽をあさってきた。
それがここ数年、完全にくたびれてしまっていて、以前のようには音楽に向き合えなかった。


「もう一生このままなんじゃないのか」
そう思ったこともあった。



そんな時、以前中古CD屋で購入してから追いかけていたb-flowerが新しい音源をリリースするという情報を目にした。それが「つまらない大人になってしまった」。


それを聴いて元気を出しているうちに、次はこの「33 Minutes Before The Light」というLivingstone Daisy 名義でのアルバムリリース。


これを聴かないこと自体は簡単だろう。「くたびれているから」「もう音楽には興味がわかないから」。いくらでも言い訳は考えつく。


しかし、インターネットにupされているダイジェストの音源を聴いて、そんなことも言っていられなくなった。
単純に楽曲が良かったのだ。この音楽を、きちんとした音質で聴いてみたくなった。


気付けば何度も同じCDをグルグルと再生している。ラストの「この悲しい世界」から、また「Nocturne」へ。これ狙ってやってるんじゃないかな、なんて思いながら再生。こんな感覚はいつ以来だろう。


シンプルな構成の楽曲がほとんどだ。ムチャクチャなものは全くないと言っていい。
奇をてらわなくとも、音楽はまだまだ素晴らしさを持ってる。


これは「好きな人だけ聴くCD」になるにはあまりに惜しい。もっと多くの人に聴いてもらいたい。
何年も音楽から離れていたであろう人が重い腰をあげ、世に送り出した力作だ。
だから、僕たちリスナーだって、アクティブに動き出したっていいんじゃないか。



僕はもう「くたびれた」と言うのはやめようと思うよ、この音楽に会えたからね。
そう言って、また時間が経って僕は「くたびれた」というかもしれない。
でもその時は、きっとLivingstone Daisyの新譜が出ていて、「おい、元気出せよ」なんて言ってくれるんじゃないかな、なんて都合の良いことを考えている。




「さあ行こうぜ」
君の人生を豊かにする音楽は、これかもしれない。