ある女性の思う事その3
「世界は矛盾に満ちているのです」
そう言ってしまった瞬間、頭の中で考えていた事が急に安っぽく思えて嫌になった。
私の言葉は私の意志に関係なく、次々に口をついて出てくる。だから私にも本当は何が言いたいのか、どうしたいのかよく解らない。
「これが私の望んだ世界」
そう断言出来ない。
子供の頃、沢山のものに憧れた。公園にある遊具や、坂を下っていった所にある酒屋さんの変わった感じとか、その店の中にあるガチャガチャのガムとか、それを食べながら帰る時に見える夕暮れ時の町並みとか。そんなものに、ずっと私は憧憬に近い感情を抱き続けている。
変わったのは私なのか、周りなのか、それとも両方なのか、誰か教えてよと何度も呟いた。
心が、魂が震える時が時々あるのは確かなのに、私はそれを認めたがらない。景色、大切な人、大好きなもの、そんな事が、そんな言葉で表現される事を嫌がっているように思えて仕方がなくなる。結局しばらくして、言葉にできない事と、言葉にしかならない事があるのだと気付いた。
「私はあなたの事が好きなんだよ」
鏡の前で呟くけど、あんまりピンとこない。
「・・・私は、あなたにここにいてほしい」
あなたの心は震えてくれるだろうか。