妄想

久しぶりにシリーズ物を書いてみようと思う第八回「私の気持ち」

私の気持ちを どうかきちんと聞いて下さい 「生きたくても 生きられない人」と比べないで 耳を傾けてみて下さい あなたはきっと 私のことを「寂しがりやだ」とか「おおげさな」と言って 相手にしてくれないでしょう 私はきっと あなたのいうようで ただの寂…

久しぶりにシリーズ物を書いてみようと思う第七回

目が覚めた時、天井がまず視界に入った。 最近は仕事がめっきり減った。収入がない時は、貯蓄を食いつぶしながら、次は何をしたらいいか、なんて事を考える。 私の思考は、ほとんどストップしていた。何が、どう、どうして? そんな事ばかりが頭をよぎるだけ…

久しぶりにシリーズ物を書いてみようと思う第六回「テイク・イット・イージー」

ラジオから懐かしい曲が流れた。イーグルスの「take it easy」。 金欠のためエアコンを切り、扇風機カラカラ回る部屋で執筆活動をしていた私は、思わずラジカセにかじりついてしまった。 あぁ、我が青春。使い古された言葉、「テイク・イット・イージー」。…

久しぶりにシリーズ物を書いてみようと思う第五回

何があなたとの距離を作る事になったのかずっと考えていた。 私には覚悟もあった。意志も。ただ、何かが足りなかった。 待って。もう少し、歩くスピードを落として・・・。 久しぶりに見た夢は、随分と懐かしく、後味の悪いものだった。 梅雨明けの、まだ湿…

久しぶりにシリーズ物を書いてみようと思う第四回

「ふう、こんなものかな」 ノートパソコンの前にはり付くこと半日、ようやく今度の雑誌のコラムの大枠が完成した。目がかすれて、しぱしぱする。 「コーヒー、コーヒー」 眠気覚ましにはカフェインがもってこいである。いや、カフェインというより、コーヒー…

久しぶりにシリーズ物を書いてみようと思う第三回

炎天下、今にも火を放ちそうなアスファルトの上を、私は走っていた。理由は簡単、歩いていては電車に間に合わないからだ。 先日久しぶりの友人から電話があった。用件は「会ってから話す」のだそうだ。学生の頃からの付き合いで、秘密主義な彼女のそうした所…

久しぶりにシリーズ物を書いてみようと思う第二回

夜の深い深い闇に飲み込まれそうになって、思わず私は缶ビール片手にアパートを飛び出す。 頭の中では音楽が、とってもはっきり流れていて、それを口ずさむ。とても有名な歌。 「生まれた所や、皮膚や、目の色で・・・」 そんな歌だった。当時はとても泣けた…

久しぶりにシリーズ物を書いてみようと思う第一回

サウナは空腹に限る。 8分から10分入り、水風呂で体温を下げ、露天に出て私はしばし脱魂状態を味わう。自分という存在が、空気と溶け合った様な感覚は、何度体験してもやめられない。病み付きになるのである。 それから、それを何度か繰り返して、最後に湯船…

加速する日々、行き着く先

取り残されている自分がいる事に気付く。 あぁ、退屈だ。新しい事なんかなんにもありゃしない。なんなんだろうこの気持ちは。 「旅にでも、そうだ例えば、外国にでも行ってみたらどうだ」 よく話の合う学校の先生が、そんな事を言う。僕は思わず反射的に、 …

どこにも帰らない

約束の時間には、30分は早く着く。それが相手に対しての礼儀だと思ってきたし、なにより自分自身の生き方を、表していた。 約束は簡単に破られた。口約束も、堅く結ばれたはずの約束も、自分のこんな気持ちとはまるで無関係の所でない事になっていた。あると…

思う事

心を許せる人って、そんなに何人もいるものじゃないと、最近になって思うようになってきた。私は19歳だ。 自分では色々考えて生きてきて、進路選択して大学に来たと思っていたけど、どうもそうではなかったみたい。ここには魅力がない。私を興奮させるものが…

スローガンに冒される私たち

若い男女が喫茶店で向かい合っているが、どうも口論になっているようである。互いに言う事の節になる言葉を、メモ代わりに携帯電話に打ち始めた。端目からはコーヒーを飲みながら話に詰まったカップルが、二人して携帯でメールでも打っているように見える。 …

子供の頃の話

とても大切なことを、いつもいつも考えていました。空の青さ、月の満ち欠け、そんな当り前のようなことが、私にはどれも大切だったのです。 冬がきても、ずっと星空を眺めていました。段々と淋しくなってきても、ずっと見上げていました。 そのうち、眼が見…

「philosoph-war」その1

ありとあらゆる訳の解らない事を考えて、訳の解らない結論を得る。そんな事をもう何千何万と繰り返してきた気がする。 「先生、さよなら」 「ああ、さよなら」 これも繰り返し、繰り返ししてきた慣習のようなものだ。 私はもうじき定年を迎える。生徒もそれ…

気の狂いそうな夜に

私は車を慌てて走らせ、あてもなく彷徨う。人はどこにいるのだろう。 子供の頃は暗闇にはお化けか幽霊が居るだなんて、今でも信じていない訳じゃないけど本当に信じていた。だから夜の闇は怖かったし、その闇に浮かぶ明かりはもっとずっと怖かった。 そんな…

白い錠剤を飲み下して

私は深い眠りに落ち、そして夢を見るのです。 気が付くと朝はもう過ぎていて、太陽はなくなってしまった。途端に淋しさが湧いてきて、でもそれも私の所にはきてくれなくて。それだからこそこの世界には秩序があるのよ、と、大好きだったあの人が言う。 夏で…

ある女性の思う事その3

「世界は矛盾に満ちているのです」 そう言ってしまった瞬間、頭の中で考えていた事が急に安っぽく思えて嫌になった。 私の言葉は私の意志に関係なく、次々に口をついて出てくる。だから私にも本当は何が言いたいのか、どうしたいのかよく解らない。 「これが…

ある女性(21歳)の思う事、その2

金曜日の帰り道、猫に会った。 私は猫の瞳をみつめた。その瞬間、周囲から音という音が消えた。と思ったのも束の間、すぐに大型のトラックが後ろを通って私は現実に引き戻された。 ともかく、猫も私を見ていた。私たちは見つめあった。 何分経ったろう、ふと…

ある女性(21歳)の思う事

氷を口に含むのを見届けた。世界のはじまりと終わりは、見逃した。 私の関心はただ彼一人にあったから、その他の事柄は正直どうでもよくなっていた。私は盲目だったかもしれない。 私は一度に二つ以上の事が出来ない。不器用で、その上手際も悪い。だからそ…

手記

少し寝たら、気分は幾分楽になっていた。寝呆けた感覚が苦しさを紛らわせているだけなのか、疲労が和らいだからなのか、はたまた微睡みに癒されたのか、定かではない。 私は孤独だと思う。しかし本当は誰しもがそうであるという事も、なんとなくではあるが解…

続き・人間についての続き

「人間、ねえ」 医者は一人で考え事をしていた。 「ある人にとっては高尚なモノではないし、またある人にとっては崇高な存在になる、この違いはなんなんだ」 来る日も人間、人間、と医者は呟いていた。 「器用なんですね、先生は」 「どうして」 「そうやっ…

人間について

「先生は人間についてどんなイメージを持っておられますか」 患者が唐突に訊ねた。 「なんだね急に」 医者はびっくりしてそう言った。 「イメージねぇ」 「そう、イメージです」 「そうだな・・・・・・」 医者は思案を巡らせた。 「自分も含め、そんなに高…

続き・できるならとっくにそうしていたから

「ねえねえ、今週末暇?」 「んー・・・」 私は考えを巡らせる。特に予定は何もない、が、 「・・・あいてないよ」 友人はがっかりしたようにうなだれて 「そっかぁ・・・。じゃあまた今度ね」 と言った。 後々聞いた話によると、その日はいわゆる合コンとい…

続き・奇跡について

「先生は奇跡を信じますか」 「なんだい、いきなり」 「いや、私は信じているんですが、先生はどうなのかなと思って」 「奇跡って、どういう類の奇跡だね」 「例えば、もう絶対に助からないといわれていた末期ガンの患者が回復する、とかそういう話です」 「…

続き

「子供の頃神様にあった事がありますが、最近はめっきり姿を見かけなくなって、自分はもう見放されたのではないかと、そんな風に思います」 「どう思うね」 診察室を出るなり、医者はカルテを助手に放り投げそう聞いた。 「どうって・・・自分だけの世界、と…

変わって日本。前書き、のようなもの。

「今にして思うと、こんな状態に人間が、いや世界が陥ってしまうまで、どうして誰も結果的には何もできなかったかと考えてみると、皮肉にも人間が構築しているこの社会形態こそが、そういった懐疑的な思想を黙殺する様なメカニズムを呈しているのだという一…

あなたの名前が知りたい。

それは唐突な質問で、キャスリンはしばし固まったままになってしまった。 ある暖かい午後の事である。 普段はしない散歩を彼女はしていた。勿論決まった散歩コースなどがある訳ではないから、気の向くままに、ブラブラと徘徊した。 歩いている途中、地面に目…

キャスリン、人生の午後

母が死んでからの人生は、疾風怒濤のようにキャスリンには感じられた。 キャスリンが30になった時、キャスリンの母はこの世を去った。死因は良く解らなかったが、悪性の腫瘍だと医師は説明した。 彼女は不特定多数の人間と付き合っているが、子供はいない。…

出会い。

彼女は自分のお気に入りの洋服をバッグに詰めると、既に亡きものとなった主人に別れを告げ、家を飛び出した。 授かった命を体に宿したまま、彼女は考えた。 「これからどうしよう。」 今生きる為に自分がするべき事は、つがいとなれる存在を見つける事だと彼…

暇つぶしに妄想。

「だめよジョセフッ!」 大声で叫ぶジョアンナ。ジョセフは彼女の制止を振り切りこめかみに銃口をあてる。 「もう終わりなんだよ、あそこのバーの女に先月分の給料もみんな入れちまった。もう生きていけないんだよ」 「そんなこと言わないでジョセフ・・・お…